デザイン・データ・マネージメントの概要と実際 (1)

2021年5月14日

今回から3回にわたって、SOSを使用したデザイン・データ・マネージメントについて機能の概要と実際の使用方法を解説していきます。技術解説と言うよりも、どう使うかに焦点を当てて説明したいと思います。

設計効率の低下

IC設計は回路の複雑化とそれに伴う大規模化に依って、効率が低下してしまう要因が増加しています。

  • 複数人が同じデータにアクセスするので、上書き、所有者の不明化が起こる。
  • ファイル数が多いため、正しい、最新のデータセットを判断できなくなる。
  • 過去のデータセットが整理できず、トレーサビリティが保持できない。
  • バックアップがたまり、整理ができなくなる。ディスクを無駄に消費する。
  •  データとドキュメントの関連が取るために労力が大きい。
これらの問題は、解決するための労力や時間が回路の複雑度と規模に依って加速度的に増加するため、正しい状態を保持するために設計にかける時間が圧縮され、最悪の場合は間違ったデータセットを使ってしまい、設計の品質そのものに悪影響を及ぼします。
更にデータの関連性が失われてしまうので、履歴を管理したり、遡ったりすることも容易ではありません。

データ管理ソフトを導入してデザイン・データ・マネージメントを行う事で、先に挙げた問題点を解決する事が可能になるので、設計者は設計に集中する事ができ、マネージャーは正確な設計進行を把握する事が容易になります。
要望する正しいデータ・セットを履歴から呼び出す事ができ、整理にかける時間をぼぼゼロにして、ミーティングも短時間にする事が可能です


基本機能と使い方

Cliosoft社が開発するSOS,デザイン・データ・マネージメント・システムは、一般的にソフトウエア開発で活用されている、リビジョン管理ソフトをIC設計に特化して拡張したものです。

 
ソフトウエア開発ではSubversionやGitと言ったリビジョン管理ソフトに依って設計データを管理し、設計効率と品質を大幅に向上させる事に成功しています。
SOSはリビジョン管理ソフトのメソッドをIC設計で適用するために、様々な機能やアイデアを拡張しています。
基本的な機能を簡単に説明すると、データ管理ソフトと言うのは自動バックアップシステムです。
設計データ、それに関連する実行ファイルやドキュメントは、全てリポジトリと呼ばれるデータ・ベースに収納されます。
ユーザは自分の作業ディスク領域に、ワークエリアと呼ばれるディレクトリを作成して、そこにリポジトリから目的のデータをコピーし、設計を行います。
設計作業に依って更新が行われたファイルをリポジトリに登録すると、自動的にバージョンが更新され、更新した日時とユーザを記録します。
更新された前のデータも、リポジトリには過去のバージョンとして保存されています。
 
 
ファイル(設計データ、それに関連する実行ファイルやドキュメント)の各バージョン間の関連、つまりファイルの履歴と、バージョンが登録された日時、ユーザの記録は、リポジトリの中に強固に管理、保存されているので書き換えられる事はありません。
リポジトリはデータベース化されているので直接改ざんする事はできず、これはセキュリティの面でも非常に有利です。
ファイルが作成された日時がきちんと確定しているので、日時を特定したファイル・セットを容易に再現する事が可能で、例えばライブラリを更新した日や、全体のシミュレーションが初めて通った日、レビューを行った日さえ確定できれば、その際のデータ・セットを取得可能です。もし明確なイベント(例えばテープアウト)のデータ・セットを記録したい場合は、スナップショット機能により明示的な名称で記録する事も可能です。

複数の設計者がワンセットのデータで設計作業を行う場合、エディットの競合は大きな問題になります。SOSの場合、自動でのマージができないEDAツールに使われるOAデータベースを取り扱う事を想定しているため、エディット作業を行っているファイルは、他のユーザに対してロックを行い競合を防ぎます(ロック・ポリシー)。デジタル設計のユーザのようにHDLなどのテキスト・データを取り扱う場合には、オプションとしてSubversionやGitと同様のマージ・メソッドを適用する事もできます。